« 2008年11月 | トップページ | 2009年1月 »

2008年12月

【ブックガイド】ART ALBERT SKIRA版 (1943-1945)

ART ALBERT SKIRA版

skira1943

 1942年頃にテプフェールの文章やまんがなどを集めた大規模な全集の刊行が開始されました。刊行したのは、スイス・ジュネーブのアール・アルベール・スキラで、まんがは1943-1945年にかけて「CARICATURES」シリーズ全11巻としてまとめられています。
  1. M.ジャボ、M.ジャボについて(文章、1837)、M.ジャボについて(文章、1839)
  2. M.クレパン
  3. M.クレパン(草稿版)
  4. M.ヴィユ・ボワ
  5. M.ペンシル
  6. フェステュス博士
  7. アルベール
  8. M.クリプトガム
  9. M.トリックトラック、M.ボワゼック、M.ヴェルプレ(未完の3作品)
10. オートグラフィについてのエッセイ、オートグラフィについてのエッセイに関する注記
11. 観相学についてのエッセイ、書誌一覧

 まんが作品は、オリジナルの本から復刻していますが、線のかすれを補修したり、元々途切れていた枠線をつなぎ直したりと、いろいろ手が入っています。中には、線のかすれを想像で補修したために、絵の一部が改竄されている部分もあり、現在の目で見ると復刻作業としては、決して高いレベルとはいえません。また、複写によって線が全般的に太くなったため、人物に対して背景の絵が強く感じられたり、天地と左右の比率が変わって変形しているページがあるなど、細かい点ではかなり不満もあります。
 現在新刊で入手できる本のうち、アメリカのUniversity Press of Mississippi版と、フランスのHoray版は、この全集と同一の原版を使用していると思われるため、同様の問題を抱え込んでいます。これらの問題は、作品を楽しむ上では、大きな障害とはなりませんが、テプフェールらしい細い描線やオリジナルへの忠実度にこだわるのであれば、Seuil版がおすすめです。(ちなみに、今回刊行した日本語版「M.ヴィユ・ボワ」は、オリジナルの本から新規にスキャンしています)

|

【ブックガイド】Garnier Frères版 (1860)

Garnier Frères版

Vb1860_01
▲1860年版「M.ヴィユ・ボワ」表紙
Vb1860_02
▲1860年版「M.ヴィユ・ボワ」扉
Vb1922_01
▲1922年復刻版

 テプフェールの死後14年たってから刊行された新シリーズです。版元はフランスのガルニエ兄弟で、テプフェールの息子のフランソワ・テプフェール(1830-1876)が版を描き起こしたと言われています。
 本文はすべて片ページのみの印刷なので、分厚い本になっています。テプフェールのオリジナル本は、最初に刊行された「M.ジャボ」をのぞき、すべて両面印刷でした。おそらく、本の見開き状態でコマが連続することを意識していたのだと思われますが、このシリーズではそのことが無視されてしまいました。
 本文は、オリジナルを丁寧にトレースしており、かなり似た仕上がりになっています。ただし、絵とテキストの一部には変更が加えられているようです。
 1922年頃には復刻版も出ました。ほとんどそっくりな仕上がりですが、表紙のデザインが多少変更され、最終ページの下部に小さく復刻版のクレジットが加わりました。

|

【ブックガイド】Collection des histoires en estampes (Kessmann,1846)

Collection des histoires en estampes de R.Toepffer
(Kessmann)

Kessmann_jabot01
Kessmann_jabot02
Kessmann_jabot03

 これまでは、現在でも手に入る本を紹介してきましたが、ここからは、過去に発売されてきたテプフェールのまんが作品集を紹介します。
 最初に出版された作品全集は、1846年に刊行が開始されたもので、「M.クリプトガム」をのぞく6作品が順次出版されました。版は、作者の了解の下に他人が描き起こしたものですが、忠実なトレースでテプフェールの絵を再現しており、作者本人も満足する仕上がりだったと伝えられています。刊行の途中で作者は世を去りますが、作者本人によってオーソライズされた作品集として、貴重な存在だと思います。
 文字は、仏独の併記となっており、ジュネーブ(スイス)のケスマンと、ライプツィッヒ(ドイツ)のヘルマンの2つの版元がクレジットされています。(ドイツではこれ以後も何度かテプフェールの本が刊行されています)
 2言語対応のため文字スペースが大きくなり、オリジナル版に比べると絵が少しトリミングされて狭くなりましたが、文字はきちんとした筆記体になりました。
 扉絵には、各作品の主人公が勢ぞろいしています。

|

« 2008年11月 | トップページ | 2009年1月 »